何かを習得する際、その始まりは多くの場合、模倣から始まります。運に恵まれれば、信頼できる指導者に出会えることもあります。その指導者を信じ、技術を徹底的に追い求めることが、技術者としての第一歩だと私は考えています。たとえ指導者に欠点があっても、その技術に確信を持てるならば、私はその技術に心酔し、自分の全てを注いで学んできました。
やがて、時が経つにつれて、模倣を越え、自分自身の感性が現れ始めます。自分の好みやスタイルだけでなく、目の前のお客様のために、何か特別なものを提供するようになります。そうして、自分のオリジナルな感性が育ち、独自の道を歩み始めるのです。
師から離れて自分の道を歩む中で、指導者の存在がどれほど貴重であったかを理解し、一人で生きることの難しさも実感します。自分を信じることの大切さと同時に、その危険さも学びます。そして、強い客観性を持ちながら、自分の感性を何度も疑い続けるようになりました。それは自信がないわけでも、迷っているわけでもなく、自分の感性をお客様が安心して受け取れるものにするための大切なプロセスです。
美容の仕事をしていると、時折、誰かと対話しているような感覚になります。静かな空間にいるはずのお客様に、心の中で問いかけたり、相談しているように感じることもあります。時にはそれが不思議な感覚で、我に返りお客様に謝ることもありますが、私はそれをポジティブに捉えています。美容の世界には、個性豊かで少し変わった人が少なくありません。それが結果的にお客様を笑顔にするなら、それで良いのです。
普段は自分をさらけ出すことに不安を感じ、友人を作るのも苦手ですが、今ではありのままの自分で生きることが正解だと感じ始めています。
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