ホームステイ先のネネの家では、広さ8畳ほどのシングルベッドと洋服タンス、小さな机と椅子がある部屋が私の新しい住まいとなりました。
ベッドに倒れ込み、天井を見上げると、日本の家よりも天井が高いように感じ、
「ロンドンに来ちゃったんだな…」
と自分が遠く異国の地にいることを初めて実感しました。その瞬間、少し不安がよぎりましたが、
「大丈夫だろう。外人はフレンドリーだし陽気なはずだ」
と自分に言い聞かせました。
実際には、私は海外経験が初めてで、アメリカのカリフォルニアのフレンドリーなイメージを勝手に持っていましたが、イギリスやヨーロッパの文化をほとんど知らなかったのです。
これから通うビダルサスーンのロンドン校は、ファッションやモードに大きな影響を与えた名門校。
そこで働くプロフェッショナルたちはプライドが高く、世界中から集まる生徒たちは自信に満ちたスノッブな人々ばかり。
英語もままならない、無知で能天気な日本青年がどうやってやっていくのか、この時はまだ全くわからないまま、私は新しい挑戦を始めようとしていました。
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