やはり、髪型があっての女性美ではなく、女性があってこその髪型だと感じます。容姿の美しさは、女性美のほんの一部でしかありません。
私は基本的に、お客様が自宅でブローやセットが難しいことを前提にカットを考えています。
美容師がどんなに完璧なヘアスタイルを作り上げても、お客様がその再現性に悩むことが多いからです。
多くのお客様は、冷静でドライな目線でジャッジをしています。
「サロンでは綺麗になっても、家に帰ったらどうなるのか? シャンプーをしたら元に戻るのでは?」と感じる方も多いでしょう。美しさが見えるか見えないかは、個々の価値観の違いというよりも、その人の感性の成熟度に関わっていると思います。
ここで怖いのは、自惚れと無知です。これに注意を払いながら、プロとしての目線だけでなく、お客様の目線、さらには素人の目線を持つことが重要です。これこそが、造り手にとって本当に大切な観点だと考えています。
プロとしての目線は、美容師としての経験を積んでいけば自然に身に付きます。ですが、実際にそのヘアスタイルを日常的に再現するお客様の立場から見ることが、より良い結果を生むのではないでしょうか。
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