フリーランス美容師

私はずっと、クチコミだけを頼りにフリーランスで仕事をしてきました。

お客様という存在は、自由に選べるもの。私は私自身が商品であり、特定のサロンに所属する後ろ盾も、サロンの雰囲気という装飾もありません。

日本中を回り、短時間で多くのお客様を仕上げる仕事よりも、その方の今の心の状態や、求めている期待・願望に向き合い、その方の顔や髪が持つ本質的な魅力を引き出す仕事を選びました。サロンという固定の場所ではなく、さまざまな地域で、人間性や心について学びながら仕事をしてきたのです。

ある男性から「女性ばかりで良いね、楽しいこともあるでしょ?」と言われたことがありましたが、それがこの仕事に対する認識なのかと驚きました。笑顔で「楽しいですよ、やってみますか?」と答えたものの、仕事に対する認識の浅さに少し面倒さも感じました。

ある時、癖毛の女性が来てくれました。彼女は「私の髪が多くて大変でしょう?」と話し始めましたが、私は「そんなに大変じゃないですよ」と答えました。すると彼女は、過去に横浜の美容院で「髪が多くて大変だから割増料金になります」と言われた経験があったとのこと。彼女はその経験から、自分の髪をネガティブに捉え、自分自身を美と切り離してしまったのだと感じました。

美容師が手渡すべきは美です。しかし、時にはその代わりに、複雑な感情や傷を手渡してしまうこともあります。私も気をつけなければならない問題です。これはサロンに所属しているかフリーかに関係なく、人間としての問題です。

サロンにいると、自分自身が見えなくなり、お客様と対峙することが当たり前になってしまいます。しかし、私のように完全にフリーランスで仕事をしていると、常に不安があります。その不安こそが、上手くなりたいという気持ちを支え、常に自分を見つめ直す原動力となります。

お客様が自分を選んでくれることは、本当に貴重で感謝すべきことです。毎回、初めてのお客様に接するような気持ちで仕事に臨みます。お客様は自由に選ぶ権利がありますから、もし再び来ていただけたなら、それは大きな喜びであり、ありがたいことです。

以前、バブル時代を経験した女性から「フリーランスって、お店を持てないだけじゃない?お店を持たないの?」と聞かれました。彼女の言うことにも一理あります。しかし、私は同じ場所にずっといることができない性分です。それに、まだまだ知らない地域が日本にはたくさんあります。

フリーランスであれば、自分が行けばどこでも仕事ができる。そして、いろいろな場所で必要としてくれている人たちがいると感じるのです。だからこそ、私はこのフリーランスという道を選び続けています。理解してくれる人はきっといると思いますし、このやり方をもう少し続けてみようと思っています。

今、ようやくクチコミだけではなく、さまざまな方法で少しずつ新しいチャンスを得ようとしています。最近はスポットで使える美容サロンも増え、これまで変わらなかった業界の形が変わってきています。

技術が上手いか下手かは、お客様が決めることです。私はできる限り尽くし、信じて仕事をするだけです。