美容院では、仕事が終わった後にスタイリストやジュニアスタイリストが練習をして帰ることがあります。私もその一人で、デザインを考えたり、イメージしたバランスを実際にカットモデルをお願いして試すことで技術を磨いています。
ただ単にカット技術を学ぶだけでなく、イメージの変化についても勉強しています。さらに、写真撮影に慣れることも目的の一つです。
ある日、少し内気で、恥ずかしがり屋な方にご協力をお願いしました。お客様にとって、自分ではなく私がイメージを形にするため、恥ずかしさよりも楽しさを感じながら新しい自分を体験していただけました。
まず、前髪を左から右に流していたスタイルを、そのまま前に落とし、毛先の約1/3に軽いカールをつけてみました。それだけで、まるで塗り絵に色を差し込んだかのように雰囲気が変わりました。次に、髪を手ぐしで後ろに送り、顔周りの髪をスッキリさせたところ、凛とした強さを持つキャリアウーマンのような雰囲気が生まれました。
「なるほど、強さを引き出すことができた」と感じた私は、今度は柔らかさや可憐さを探り始めました。髪を片側にまとめて前に出すと、可憐でありながらも色っぽい雰囲気が生まれたのです。しかし、しっとりした色気ではなく、クールでありながら魅力的な印象を引き出すことができました。
この頃になると、お客様自身も写真に撮られることに慣れ、自信が表情に現れ始めます。
女性が自分自身の魅力に気づくと、何かが変わり始めます。まるでオーラが漂い、美しさの香りが広がっていくように感じられるのです。
この瞬間こそが、私が美容師として最も喜びを感じる時です。
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